大手ドラッグストアの成長が目ざましい昨今、薬局業界は競争が激化していくことが予想されています。では、今後具体的にどのように変わっていくのでしょうか?その将来性について詳しくまとめました。
薬局業界は、少子高齢化や医療政策の変化を背景に、大きな変革期を迎えています。特に注目されるのは、新規参入が難しくなっている現状です。調剤報酬の引き下げや市場競争の激化によって、小規模薬局が経営の危機に直面しています。一方で、全国展開する大手チェーンは資金力や組織力を活かし、M&A(企業買収・統合)を通じてさらなる成長を遂げています。
例えば、ある調査によると、薬局業界のM&A件数は年々増加しており、特に20店舗以上を展開する法人の拡大が顕著です。これに対して、1~5店舗を運営する中小規模の薬局は減少傾向にあり、経営環境の厳しさを浮き彫りにしています。こうした現象は、地方に多い個人経営の薬局に特に深刻な影響を与えています。
小規模薬局にとっての最大の課題は「利益率の低さ」です。大手チェーンがスケールメリットを活かして効率的な運営を実現している一方で、中小規模の薬局は高い人件費率に悩まされることが多く、経営が圧迫されています。特に、薬剤師の人件費は経費の中でも大きな割合を占めるため、人手不足が解消されない限り、この負担はさらに増加する可能性があります。
加えて、厚生労働省が推進する「地域包括ケアシステム」の一環として、薬局にも在宅医療やかかりつけ薬局機能の充実が求められています。これに対応するには、薬剤師の専門性を活かした新しい業務形態への移行が必要ですが、リソースに乏しい小規模薬局では対応が難しいのが現状です。
ドラッグストアが市場規模を拡大し続けているのに対し、所謂「まちの薬屋さん」的な存在である調剤薬局は近年厳しい立ち位置にあると言われています。それというのも、調剤薬局は数だけで言えばコンビニエンスストアより多いのです(※)。
つまり、同じエリアの中でも競合がたくさんいるということ。また、患者さんの負担の軽減を目的として調剤報酬改定もマイナス方向に設定されやすい傾向にあるため、これから新規参入するのは非常に難しいと言えるでしょう。
調剤薬局は、必ず薬剤師の在籍が求められます。しかし、そのいっぽうで「慢性的な薬剤師不足」を抱えがちという側面も。
これはドラッグストアへ就職を希望する人が増えたことや、大学の薬学部が従来の4年制から医学部同様6年制となったため社会に出るのが遅くなっていること、比較的女性が多い職業ゆえに、配偶者の転勤や妊娠などで休職・退職する方が多いことなどが理由とされています。
また、近年では「対物業務から対人業務へ」と重視される部分が変わったため、以下のような対人業務に対応できなければ薬局の継続が困難になりつつあるようです。
とはいえ、従来とは異なるサービスを模索しやすい点もあります。それは、主に以下のような需要が広まっているからです。
高齢化に伴い、需要が高まっているのが在宅訪問。患者さんにきめ細やかな服薬指導ができる上、医師や介護士の負担を分散したり残薬管理・処方提案などによって適切な薬物療法が行えたりする側面から、医療機関にとってもメリットが大きい方法でもあります。
新型コロナの感染拡大を受け、特に2022年4月の改正省令によって多くの規制・規則が緩和されたことで、オンラインの服薬指導が非常に便利に利用できるようになりました。これは感染リスクを防げるのみならず、移動時間や待ち時間も軽減することが可能です。
また、訪問診療が難しい薬剤師にとっても負担が減るはず。リモートワークとしても活用できますから、就業環境も柔軟になり、人手不足の解消にもつながるかもしれません。
薬局業界は現在、調剤報酬の改定や医療費抑制策の影響を受け、大きな転換期を迎えています。小規模薬局にとっては、従来の「処方せん依存型」経営だけでは厳しい状況が続いており、新たな経営戦略が求められています。ここでは、薬局が生き残るために重要な戦略について解説します。
地域密着型の薬局として、かかりつけ薬局機能を強化することは生存戦略の一つです。患者の服薬情報を一元管理し、健康相談やアドバイスを提供することで、信頼関係を築くことができます。さらに、薬剤師が積極的に患者とコミュニケーションを取り、生活習慣の改善や慢性疾患の予防に貢献することで、単なる「薬を受け取る場所」ではなく「健康をサポートする場」としての価値を高めることができます。
また、オンライン服薬指導や電子処方箋の導入により、患者がより便利に薬局を利用できる環境を整えることも重要です。ITを活用することで、患者の利便性を高めると同時に、業務効率を向上させることが可能となります。
高齢化が進む中、在宅医療のニーズは年々高まっています。薬局が在宅訪問サービスを提供することで、自宅で療養する患者の服薬管理をサポートし、地域医療に貢献することができます。特に、かかりつけ医や訪問看護ステーションと連携しながら、薬剤師が直接患者宅を訪問し、薬の管理や副作用のチェックを行うことで、医療の質を向上させることが可能です。
さらに、在宅医療の提供は新たな収益源にもなります。医療機関との連携を深めることで、継続的な患者対応が求められ、結果的に経営の安定化につながります。
薬局は単なる調剤業務だけではなく、地域住民の健康サポートを行う拠点としての役割も果たすべきです。例えば、生活習慣病の予防に関する健康相談、栄養指導、定期的な健康測定イベントなどを開催することで、地域とのつながりを強化できます。
また、セルフメディケーション推進のためにOTC医薬品やサプリメントの販売を強化し、患者が自身の健康管理を積極的に行える環境を提供することも重要です。こうした取り組みを通じて、薬局は地域の健康維持に貢献しながら、新たな収益の柱を築くことができます。
業務効率化とサービス向上を実現するために、デジタル技術の導入が不可欠です。例えば、電子処方箋の導入により、処方せんの管理や患者対応の効率化を図ることができます。また、オンライン服薬指導や予約システムを活用することで、薬剤師の業務負担を軽減しながら、患者の利便性を向上させることが可能です。
さらに、AIを活用した在庫管理システムを導入することで、適切な在庫量を維持しながら無駄なコストを削減することができます。デジタル技術の活用は、薬局経営の効率化だけでなく、より良いサービス提供にもつながります。
薬局業界は、医療環境の変化や技術革新により、従来のビジネスモデルからの進化が求められています。患者のニーズの多様化に対応し、競争力を高めるためには、地域医療との連携強化、非来店型サービスの導入、健康サポート機能の拡充、デジタル技術の活用といった新たな取り組みが必要です。
薬局は、単に処方せんを受け付ける場から、地域医療の一端を担う存在へと役割を拡大しています。病院やクリニックと連携し、患者の健康情報を共有することで、より適切な薬剤提供や服薬指導を行うことが可能になります。
また、かかりつけ薬局としての機能を強化し、継続的な服薬管理や健康相談を行うことで、地域住民の健康維持をサポートすることができます。医療機関と密接に連携し、地域医療ネットワークの中で重要な役割を果たすことで、薬局の価値をさらに高めることができます。
近年、オンラインでの服薬指導や処方薬の宅配サービスが拡大しています。これは、高齢者や忙しい現役世代など、薬局への来店が難しい患者にとって大きなメリットとなります。
オンライン服薬指導では、ビデオ通話を通じて薬剤師が服薬管理のサポートを行い、対面と変わらない質の高い指導を提供することが可能です。また、処方薬の宅配サービスを導入することで、薬を受け取りに行く手間を省き、患者の利便性を向上させることができます。
薬局は、調剤業務だけでなく、健康サポートの拠点としての役割を強化しています。健康相談や栄養指導、生活習慣病予防のアドバイスなどを提供し、地域住民の健康維持を支援することが求められています。
例えば、健康測定イベントを定期的に開催し、血圧や血糖値を測定することで、早期の健康管理を促すことができます。また、OTC医薬品やサプリメントの販売を強化し、セルフメディケーションを支援する取り組みも有効です。
このように、調剤薬局業界の経営は簡単なものではありませんが、在宅訪問やオンライン服薬指導などの普及により今後はもっと自由な形でサービスを行える可能性もあるでしょう。
こちらのサイトでは他にも薬局の経営について様々な知識をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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