薬局経営は専門職である薬剤師によって運営される上、病院との連携も期待できることから、安定しているイメージがあります。しかし、実態は厳しいとの声も…ここではその理由について、詳しくまとめました。
現在の薬局経営を取り巻く環境は、これまで以上に厳しくなっています。その背景には、以下のような社会的・経済的な要因があります。
日本では、国民皆保険制度を支えるために医療費削減政策が進められています。その一環として、調剤報酬の改定や薬価引き下げが繰り返されており、薬局の収益構造に大きな影響を与えています。特に、薬価差益の減少は中小薬局の経営を直撃しており、収益改善のための新たな施策が求められています。
全国展開する大手ドラッグストアチェーンが、低価格での調剤や広範なサービスを提供することで、地域密着型の中小薬局に対して強力な競争相手となっています。特に、オンライン予約や電子処方箋対応の迅速さなど、利便性を武器にした戦略が消費者に支持されています。
近年では、電子処方箋やオンライン診療の普及が進み、薬局業務のデジタル化が急務となっています。しかし、新たな技術への対応には初期投資や運用コストが必要であり、特に資金力の乏しい小規模薬局には大きな負担となっています。
2023年に発表された東京商工リサーチの調査結果(※)によれば、2021年にはコロナ禍による影響もあり、中~小規模の薬局の倒産が「過去最高」に至ったと言います。しかし、2022年度の倒産は15件と、前年比で言えば一転減少傾向に。
とはいえ、これは追い風とは言えません。なぜならば大手ドラッグストアの広域展開や電子処方箋、ネット通販などの普及により、薬局業界の競争は更に激化していくと考えられているからです。
そもそも調剤薬局自体、「コンビニエンスストアよりも店舗数が多い」レベルで立地していると言われています。
もちろん地域密着型ならではの親しみやすさや丁寧な接客など強みはありますが、近隣地域でも既に競合が多い状態だと考えられるので、今後も依然として新規参入は難しい業界だと言えるでしょう。
調剤薬局は、薬剤師の在籍が求められます。しかし、そのいっぽうで「慢性的な薬剤師不足」を抱えがちという側面も。これは近年、大手ドラッグストアでも各店舗に薬剤師が配置される傾向になったため、就職先としてそちらを選ぶ人材が増えているという要因が大きいでしょう。
また、薬剤師は男女比で言うと女性が多い業界としても知られています。現代は結婚しても働き続ける方も少なくありませんが、配偶者が転勤になったり妊娠したりすると、どうしても休職・退職せざるを得ない実情が。
更に、大学の薬学部が従来の4年制から、医学部同様6年制となったのも若手が減った原因のひとつだとも言われています。
近年の調剤報酬改定は、薬局経営に大きな影響を与えています。 特に2024年度の改定では、調剤基本料の引き上げや医療DXの推進、在宅医療体制の強化などが重要なポイントとなっています。ここでは、調剤報酬改定に対する具体的な対応策を紹介します。
2024年度の調剤報酬改定では、調剤基本料1が42点から45点、調剤基本料2が26点から29点に引き上げられました。これにより、薬局の収益向上が期待される一方で、新たな基準に適応するための体制整備が求められます。
薬局の運営体制を整えることが重要です。 調剤基本料の区分変更に備え、薬局の運営体制やサービス内容を見直し、点数改定による影響をシミュレーションしながら、自薬局の収益にどのような影響があるのかを試算し、戦略を立てることが必要です。
電子処方箋やオンライン資格確認システムの導入が進められており、薬局にも対応が求められています。これにより、業務の効率化や患者へのサービス向上が期待されます。
電子処方箋の導入によって、紙の処方箋から電子処方箋へ移行することで、業務の簡素化と患者の利便性向上が可能になります。 オンライン資格確認の活用によって、マイナンバーカードを用いた資格確認が行え、保険適用の適正化が実現できます。さらに、患者管理アプリや薬歴管理のデジタル化を進めることで、業務の効率化を図ることができます。
少子高齢化が進む中、在宅医療の需要が増加しています。これに対応するため、薬局には在宅訪問体制の整備が求められます。
訪問薬剤管理指導の提供を強化し、患者の健康管理をサポートすることが重要です。 また、在宅医療において必要となる医療用麻薬や無菌製剤の備蓄を行い、迅速な対応ができるようにする必要があります。さらに、医師や看護師、介護事業者と密接に連携し、地域の在宅医療を支える仕組みを構築することが求められます。
かかりつけ薬剤師・薬局の制度が拡充され、薬局単位での24時間対応が求められるようになりました。患者の健康サポートを強化することで、信頼関係を構築し、長期的な経営安定につなげることができます。
24時間対応の強化を進め、夜間・休日でも相談を受け付けられる体制を整えることが必要です。 患者ごとの服薬指導を充実させ、服薬アドヒアランスを向上させる取り組みも重要です。また、かかりつけ薬剤師制度を活用し、薬局全体で患者をサポートする体制を整えることで、信頼度を高めることができます。
2024年度の改定では、薬剤師の賃上げが推奨されています。特に40歳未満の薬剤師に対して、段階的な賃上げが求められており、適切な人材確保と働きやすい環境の整備が急務です。
市場水準に応じた賃金の見直しを行い、給与の引き上げを検討することが求められます。 また、時短勤務やリモートワークを活用し、多様な人材が働きやすい環境を提供することも重要です。さらに、新卒薬剤師の採用や、転職市場を活用した人材確保を進めることで、薬局の人材を充実させることができます。
薬局経営において、国や自治体が提供する補助金や支援制度を活用することで、資金負担を軽減しながら業務の効率化やサービス向上を図ることが可能です。 ここでは、薬局経営者が活用できる主要な補助金・支援制度を紹介します。
この補助金は、小規模事業者が持続的な経営を目指し、販路開拓や業務効率化のための設備導入を支援するものです。薬局においては、新たな患者サービスの展開や、デジタル化の推進にも活用できます。経営の安定化を図るために、制度の詳細を確認し、計画的に活用することが重要です。
デジタル化を促進するための補助金で、電子薬歴システムやオンライン服薬指導システムの導入などに活用できます。これにより、業務の効率化や患者サービスの向上が期待されます。
特に、電子処方箋の普及に伴い、IT導入は今後の薬局運営において欠かせない要素となります。
中小企業が生産性向上のために行う革新的なサービス開発や設備投資を支援する制度です。薬局では、新しいサービスの展開や、より高度な医療機器の導入に活用することができます。特に、調剤の自動化や患者対応の効率化を目的とした設備投資に適しています。
東京都では、物価高騰に直面する薬局の負担を軽減するための支援金を提供しています。令和6年度も引き続き支援が行われており、都内の保険薬局が対象となります。
申請方法や支給条件は東京都の公式サイトで公開されているため、対象となる薬局は積極的に活用を検討しましょう。
※情報参照元:
東京都保健医療局(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/kenkou_anzen/yakkyoku-bukka)
あなたの調剤薬局(https://www.yppp.info/post/%E6%84%8F%E5%A4%96%E3%81%A8%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%EF%BC%81%E8%96%AC%E5%B1%80%E3%83%BB%E8%96%AC%E5%B1%80%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%80%85%E3%81%8C%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E9%87%913%E9%81%B8)
補助金ガイド(https://so-labo.co.jp/hojyokin/jizokuka/basic/1616/)
少子高齢化や薬剤師不足など、業界環境が変化する中で、「薬局のM&A」という選択肢が注目されています。ただし、売却や事業承継は専門的な知識が必要であり、自分一人で判断するのは難しいことも。まずは専門のコンサルタントに相談し、自分の薬局にとって最適な道を見つけることが重要です。
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