専門性の高さもあり、薬局経営は一見安定しているかのように思えます。しかし、実際にはなかなか先行きが難しく、廃業してしまうところも少なくありません。そこでここでは、近年の倒産件数をご紹介。廃業のポイントについても詳しくまとめました。
2023年に発表された東京商工リサーチの調査結果(※)によれば、2021年にはコロナ禍による影響もあり、中~小規模の薬局の倒産が「過去最高」の23件に至ったと言います。しかし、2022年度の倒産は15件と、前年比で言えば34.7%も減少傾向に。
そもそも数としてはコンビニエンスストアより多いとされる薬局ですから、全体で見ると倒産件数はかなり少ないことが分かります。これはなぜか?といえば「倒産と廃業は異なる」のが理由だと言えるでしょう。
薬局における廃業とは、経営が立ち行かなくなってすべてを手放さざるを得ない、という状況ではなく「自分の意志で辞める」ことを指します。手続きとしては廃業届を出し、不動産や医薬品、設備、従業員などを整理するというのが一般的な流れです。
薬局として店舗を継続しない場合、医薬品の在庫をどう処分するかが課題になることもあるでしょう。これは実は、専門の業者が買い取ってくれるケースもあります。場合によっては100万円単位の利益が出る可能性も考えられるようですから、ぜひ検討してみてください。
廃業のきっかけには「後継者不足」があることも少なくありません。そういった場合、事業譲渡や株式譲渡といった方法でM&Aを行い、手法によっては従業員はそのままに、薬局を継続しつつ経営者のみ変わるという道を選ぶことも可能です。
廃業を選びたいけれど、従業員に迷惑はかけたくない…と思っている方におすすめだと言えるでしょう。
少子高齢化や薬剤師不足など、業界環境が変化する中で、「薬局のM&A」という選択肢が注目されています。ただし、売却や事業承継は専門的な知識が必要であり、自分一人で判断するのは難しいことも。まずは専門のコンサルタントに相談し、自分の薬局にとって最適な道を見つけることが重要です。
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薬局の廃業は、単なる事業終了にとどまらず、多岐にわたる法的手続きや業務処理が伴います。この章では、廃業に至るまでの具体的な手続きとその流れを解説します。
薬局の廃業を進める際には、まず必要な書類を確認することが重要です。主に保健所や厚生局への届出、税務手続きの書類が含まれます。保険薬局指定の廃止届を提出する際には、薬局開設許可証のコピーや、指定薬局であることを証明する書類が必要です。また、廃業届に加えて、在庫医薬品の明細や処方箋の記録も適切に整理しておかなければなりません。
これらの書類は行政手続きだけでなく、廃業後の監査や万が一のトラブル対応の際にも必要になるため、事前にリストアップし、抜け漏れがないように準備することが欠かせません。
薬局を廃業する際、まず取り組むべきなのが保健所への廃業届の提出です。これは薬局開設許可の廃止を申請するための手続きであり、薬局の所在地を管轄する保健所で行います。提出期限は廃業日の10日前までとされることが多いですが、地域によって異なる場合があるため、早めに確認しておくことが大切です。
届出には、薬局開設許可証や廃業理由を記載した書類が必要です。提出後、保健所の担当者が薬局の現状確認を行う場合もあるため、事前に連絡を取り、必要に応じて準備を進めることがスムーズな手続きにつながります。
保険薬局として営業している場合は、厚生局への保険薬局指定廃止届も欠かせません。この手続きは、薬局が健康保険適用の調剤業務を終了するためのもので、書類には保険薬局指定通知書や調剤報酬の最終請求日を記載する必要があります。
特に注意が必要なのは、廃止届の提出タイミングです。廃業直前ではなく、少なくとも1か月前には提出することが求められるケースが一般的です。これにより、適切な処理が行われ、廃業後の不備を防ぐことができます。
薬局廃業において、医薬品在庫の処理は非常に重要な課題の一つです。医薬品を適切に処分しないと、廃業後にトラブルが発生する可能性があります。まず、在庫を売却する場合には、信頼できる医薬品卸業者や他の薬局と連携し、使用期限や保管状況に基づいて価値を査定してもらいます。
処分が必要な医薬品については、廃棄方法が法律で厳密に定められているため、医薬品廃棄を専門とする業者に依頼することが一般的です。自己判断で処分を行うことは法律違反となるため注意が必要です。
薬局として使用していた店舗が賃貸物件である場合、賃貸契約の終了手続きも欠かせません。契約内容によっては、解約通知を事前に一定の期間内に行う必要があります。この期間を守らないと、解約までの賃料が発生するリスクがあるため、契約書を確認し、適切なタイミングで通知を行うことが重要です。
また、自社所有の不動産であれば、売却や賃貸の検討を始めるタイミングでもあります。不動産業者と連携し、売却価値や賃貸需要を見極めた上で、最適な方法を選択すると良いでしょう。
薬局の廃業手続きが完了した後も、一定期間にわたって管理すべき書類や果たすべき義務が残ります。これらの管理を怠ると法的なトラブルに発展する可能性があるため、注意深く対応することが求められます。
薬局を廃業した後でも、処方箋や薬歴簿といった重要な書類の保管義務が法律で定められています。具体的には、処方箋の保管期間は2年間、薬歴簿の保管期間は3年間が原則です。ただし、一部の地域や特定のケースでは異なる場合もあるため、廃業前に保健所や行政機関に確認することをお勧めします。
これらの書類は、法令に基づく監査や問い合わせに備えるだけでなく、万が一の医療トラブルの際にも重要な証拠となります。保管場所は、適切に管理できる自宅や信頼できる倉庫業者に依頼すると安心です。
廃業後は、事業を終了した年の分までの税務申告が必要です。特に、売却した医薬品や設備の収益がある場合、それらも申告の対象となります。税務申告の際には、売却収益や在庫の処理に伴う費用、従業員への退職金の支払いなど、すべての収入と支出を正確に計上することが求められます。
また、廃業年度の所得税や法人税の清算が完了するまでは、税務署から問い合わせが来る可能性もあります。そのため、税理士に相談しながら申告を進めるとスムーズです。さらに、税務上の問題が発生した場合に備え、経費や売却に関する領収書や記録は廃業後も一定期間保管しておくことが推奨されます。
廃業を回避すべくM&Aを選ぶ場合、専門的な知識を持った仲介業者に相談するのが一般的。特に薬局は複雑な面があるため、経験豊富なコンサルティング会社を探す必要があります。
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薬局の経営者にとって、廃業を決断することは大きな選択です。しかし、感情に流されるのではなく、客観的な指標を基に冷静に判断することが重要です。ここでは、薬局の廃業を決断する際に考慮すべき判断基準を解説します。
過去数年間の売上や利益率の変動を確認し、売上が減少傾向にある場合や、利益率が大幅に低下している場合、さらには運転資金が枯渇しそうな状況が続いている場合は、経営の立て直しが困難になっている可能性があります。また、財務状況の健全性を把握するためには、自己資本比率が低すぎると負債の割合が高くリスクが大きくなることや、流動比率が100%未満である場合には資金繰りに不安が生じることを考慮し、分析を行うことが重要です。
近年、調剤薬局チェーンやドラッグストアが増加しており、競争が激化しています。近隣に新規開業の薬局が増えている場合や、競合が価格面やサービス面で優位性を持っている場合、自店舗の処方箋枚数が減少している場合には、競争力があるか評価する必要があります。
地域の人口が減少している場合、今後の収益確保が難しくなる可能性があります。特に、高齢化が進んでいる地域では介護施設向けの需要があるかどうか、また若年層の流出により処方箋枚数が減少していないかを考慮する必要があります。
調剤報酬の改定が経営に与える影響を分析しましょう。近年の傾向として、調剤基本料の減額、対人業務の強化、薬歴管理の厳格化などが進んでおり、従来の経営モデルでは利益確保が難しくなっています。
また、ジェネリック医薬品の普及により、薬価引き下げが進んでいます。仕入れコストと利益のバランスが取れているか、確認が必要です。
薬剤師の確保が難しくなっている場合、業務継続が困難になります。採用が困難である場合や、薬剤師の給与負担が大きくなっている場合、さらには既存スタッフの離職が相次いでいる場合には、人材確保の見直しが必要です。
従業員の高齢化も経営判断の要素となります。今後、安定的に人材を確保できるか検討しましょう。
後継者の有無は廃業の決断に直結します。後継者がいない場合、事業を継続することが困難になります。仮に後継者がいたとしても、経営意欲が低い場合は廃業の選択肢を検討する必要があります。
後継者がいる場合でも、十分な経営スキルを持っているか確認しましょう。育成期間が必要ならば、早めの準備が重要です。
薬局を廃業する際には、さまざまな費用が発生します。事前にこれらの費用を把握し、適切な資金計画を立てることが重要です。ここでは、主な費用項目について解説します。
法人として薬局を運営している場合、解散や清算に伴う登記手続きが必要になります。具体的には、解散登記には30,000円、清算人登記には9,000円、清算結了登記には2,000円の登録免許税がかかります。これらの手続きをスムーズに進めるためには、事前に必要な書類を準備し、スケジュールを計画しておくことが求められます。
解散や清算の際には、官報への公告が義務付けられています。公告費用は掲載する文章量によりますが、一般的には3万~4万円程度が必要です。官報公告の掲載には一定の期間を要するため、スケジュールを考慮しながら進めることが大切です。
廃業手続きを円滑に進めるため、司法書士や税理士、弁護士などの専門家に依頼することが多いです。これらの専門家への報酬として、十数万円以上の費用が発生することがあります。特に税務関連の処理や法的手続きをスムーズに行うためには、専門家のサポートを受けることが有効です。
薬局内の医薬品在庫や設備、備品などの処分にも費用がかかります。特に、医薬品の適切な処分には法的な規制があるため、専門業者への依頼が必要になることがあります。設備や備品については、中古市場で売却することでコストを抑える方法も検討できます。
賃貸物件で薬局を運営していた場合、退去時の原状回復工事費用が発生します。一般的には、1坪あたり数万円の費用がかかることがあり、契約内容によっては追加の支払いが求められることもあります。事前に契約書を確認し、必要な準備を行うことが重要です。
従業員を雇用している場合、解雇に伴う退職金や未払い給与の支払いが必要になります。これらの費用は、従業員数や勤続年数に応じて変動します。適切な手続きとともに、従業員に対して誠実な対応を行うことが求められます。
薬局を廃業する際には、財務整理が重要なステップとなります。適切な財務整理を行うことで、廃業後のトラブルを防ぎ、スムーズな手続きを進めることが可能です。ここでは、財務整理の主な方法と注意点を解説します。
廃業時には、店舗や設備、在庫などの資産を整理し、適切に処分する必要があります。特に医薬品の在庫は、専門の業者に買い取ってもらえる場合があり、売却を通じて一部の資金を回収できる可能性があります。また、設備や備品についても、中古市場での売却を検討することで、廃業コストの軽減につながります。
借入金や未払いの請求書など、すべての債務を確認し、清算することが必要です。取引先や金融機関と連絡を取り、返済計画を立てながら、リース契約や長期の支払い契約がある場合には解約手続きや違約金の有無を確認しましょう。適切に処理することで、信用問題を回避し、円満な廃業を実現できます。
廃業に伴い、税務署への届出や最終的な税務申告が必要となります。事業廃止届出書の提出や、消費税、所得税、法人税などの申告・納税を適切に行うことが求められます。特に、売却収益や在庫の処理に伴う費用、従業員への退職金の支払いなど、すべての収入と支出を正確に計上することが重要です。税理士に相談しながら進めることで、スムーズな処理が可能になります。
従業員を雇用している場合、解雇手続きや未払い給与、退職金の支払いを適切に行う必要があります。労働基準法に基づき、解雇予告や必要な手続きを遵守し、従業員が納得できる形での対応を心掛けることが重要です。また、再就職支援の提供など、従業員の将来を考えた対応を行うことで、円満な退職手続きを進めることができます。
取引先や顧客、関係機関に対して、廃業の通知を行います。特に、保健所や厚生局への届出は必須であり、所定の手続きを期限内に行うことが求められます。また、取引先との契約解除や、未払い金の精算についても協議を行い、トラブルを未然に防ぐようにしましょう。
少子高齢化や薬剤師不足など、業界環境が変化する中で、「薬局のM&A」という選択肢が注目されています。ただし、売却や事業承継は専門的な知識が必要であり、自分一人で判断するのは難しいことも。まずは専門のコンサルタントに相談し、自分の薬局にとって最適な道を見つけることが重要です。
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